百人一首
2010年12月17日金曜日
0035の美学
藤原仲文
あり明の月のひかりをまつほどに我よのいたく更にける哉
0034の美学
具平親王
世にふるにものおもふとしもなけれども月にいくたびながめしつらむ
0033の美学
藤原為頼朝臣
おぼつかないづこなるらむむしの音をたづねばくさの露やみだれむ
0032の美学
安貴王
あきたちていくかもあらねどこのねぬる朝けのかぜはたもとすゞしも
0031の美学
平祐挙
むねはふじ袖は清見がせきなれやけぶりも浪もたゝぬ日ぞなき
2010年8月10日火曜日
0030の美学
源順
おいにけるなぎさの松のふかみどりしづめるかげをよそにやはみる
平祐擧
むねはふじ袖は清見がせきなれやけぶりも浪もたゝぬ日ぞなき
安貴王
あきたちていくかもあらねどこのねぬる朝けのかぜはたもとすゞしも
藤原爲賴朝臣
おぼつかないづこなるらむむしの音をたづねばくさの露やみだれむ
0029の美学
源信明朝臣
ほのぼのとあり明の月のつきかげにもみぢ吹おろす山おろしのかぜ
藤原忠國
われならぬくさばもゝのは思ひけり袖よりほかにおける白つゆ
増基法師
かみな月しぐれ計を身にそへてしらぬ山路に入ぞかなしき
藏内侍
誓ひてもなほおもふにはまけにけりたが爲をしきいのちならねば
0028の美学
わがためは見るかひもなしわすれぐさわするばかりのこひにしあらねば
神な月しぐれにあへるもみち葉のふかば散なむかぜのまにまに
みそぎするならのをがはのかはかぜにいのりぞわたるしたにたえじと
いさやこらかしひのかたにしろたへのそでさへぬれてあさなつみてむ
山田もるそほづの身こそかなしけれ秋はてぬればとふひともなし
0027の美学
あきかぜにこゑをほにあげてくる舟はあまのとわたるかりにぞありける
立かへりちどりなくなりはまゆふのこゝろへだてゝおもふものかは
みのうさを思ひしりぬるものならばつらき心を何かうらみむ
いけ水にくにさかえける卷もくのたまきの風は今ものこれり
としふればよはひはおいぬしかはあれど花をしみれば物おもひもなし
0026の美学
龍田河もみぢみだれてながるめりわたらばにしき中や絶なむ
いもにこひ吾のまつばらみわたせばしほひのかたにたづなきわたる
玉くしげみむろどやまのさねかづらさねずはつひにありとみましや
山しろのいは田のをのゝはゝそ原みつつやきみが山路こゆらむ
谷風にとくるこほりのひまごとにうちいづる浪やはるのはつ花
2010年7月10日土曜日
0025の美学
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
風そよぐ ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける
人もをし 人もうらめし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は
ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
0024の美学
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣片敷き ひとりかも寝む
わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし
世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ あまの小舟の 綱手かなしも
み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり
おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣に 墨染の袖
0023の美学
嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな
村雨の 露もまだひぬ 槇の葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮
難波江の 蘆のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色はかはらず
0022の美学
ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる
思ひわび さても命は あるものを 憂きに堪へぬは 涙なりけり
世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
長らへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
よもすがら 物思ふころは 明けやらぬ 閨のひまさへ つれなかりけり
0021の美学
わたの原 漕ぎ出でて見れば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ
淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝覚めぬ 須磨の関守
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ
2010年6月28日月曜日
0020の美学
夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろやに 秋風ぞ吹く
音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
高砂の をのへの桜 さきにけり 富山のかすみ たたずもあらなむ
憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
契りおきし させもが露を いのちにて あはれ今年の 秋もいぬめり
0019の美学
もろともに あはれと思へ山桜 花よりほかに 知る人もなし
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそをしけれ
心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
あらし吹く 三室の山の もみぢばは 竜田の川の 錦なりけり
さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこもおなじ 秋の夕ぐれ
0018の美学
いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな
夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ
いまはただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで 言ふよしもがな
朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
うらみわび ほさぬ袖だに あるものを 恋にくちなむ 名こそをしけれ
0017の美学
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に いまひとたびの あふこともがな
めぐりあひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな
有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
0016の美学
かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしもしらじな もゆる思ひを
明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな
嘆きつつ ひとりぬる夜の あくるまは いかに久しき ものとかはしる
忘れじの ゆくすえまでは かたければ 今日を限りの 命ともがな
滝の音は たえて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞えけれ
2010年6月18日金曜日
0015の美学
由良の門を 渡る舟人 梶を絶え 行方も知らぬ 恋の道かな
八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
風をいたみ 岩打つ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
御垣守 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ
君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
0014の美学
恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは
逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり
逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
あはれとも 言ふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
0013の美学
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづくに 月宿るらむ
白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき
忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで
0012の美学
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ 紅葉なりけり
久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
人はいさ 心も知らず 古里は 花ぞ昔の 香ににほひける
0011の美学
小倉山 峰のもみじ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ
山里は 冬ぞ寂しさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし
2010年6月11日金曜日
0010の美学
今来むといひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな
吹くからに秋の草木のしをるれば むべ山風をあらしといふらむ
月見ればちぢにものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど
このたびは幣も取りあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに
名にし負はば逢う坂山のさねかずら 人に知られで来るよしもがな
0009の美学
立ち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む
ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは
住の江の岸に寄る波よるさへや 夢の通ひ路人目よくらむ
難波潟短き蘆のふしの間も 逢はでこの世を過ぐしてよとや
わびぬれば今はたおなじ難波なる みをつくしても逢はむとぞ思ふ
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